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御池クリニックレディースプラザ(OLPビル)
公共・福祉施設・病院・学校
竣工年月
2022年2月
所在地
京都市中京区
用途
診療所
構造
RC造 5階
延床面積
4780.96㎡
 「いきいき生きる女性を応援したい」、そんなクライアント様の想いをカタチにすべく取り組んだ『御池クリニック レディースプラザ』プロジェクト。最先端の医療技術や検査機器が導入され、人間ドックや健康診断に特化した、関西初の女性専用医療検診施設です。

 いきいきと健康で過ごすためには、病気の早期発見や早期治療が重要となります。しかしながら、仕事・家事・育児といった日々の活動を優先しているうちに、自身の定期的な健康診断が後回しになってしまう女性が多く、受診の割合は男性に比べると低い傾向にあります。
 本プロジェクトでは、そういった女性に少しでも多く、人間ドックや健康診断を受診いただけるよう、1人ひとりの状況に寄り添った配慮を行い、従来の医療検診施設のイメージでは収まらない、魅力のある施設づくりを目指しました。


●外観
 直線を基調とした外観は、正面から見ると直方体が地面から浮いているようなデザインとしました。暗い色調の素材を組み合わせて強調した水平ラインや隙が、建物全体をモダンな印象にまとめています。また、様々なサイズの開口部によって、建物に表情やリズムを与えています。
 メインで用いた石目調のタイルは温かみのある色彩のものを選定し、軒天と車寄せの天井には木目調のものを用いることで、施設利用者に落ち着きと安心感を与える工夫をしています。その一方で、入口部分においては、車寄せにトップライトを設けて外光を採り入れることで、明るく入りやすい空間となるよう計画しました。


●検診・画像診断フロア(2F・3F)
 受診者の待機場所となる2F・3Fの待合ラウンジは、自然光を採り入れた吹き抜けと木を基調とした温かみのある仕上げで、ホテルラウンジを彷彿とさせるような空間を目指しました。加えて、柱には本施設のブランドカラーをアクセントに用いることで、クリニック全体のイメージとの統一感を持たせています。また、医療検診施設として清潔な空間であり続けるため、内装材には抗ウイルス素材を用いるとともに、ウイルス等の飛散を抑える空調換気計画を施しています。

 配置は、待合ラウンジをそれぞれのフロアの中心とし、その周りに診察室や各種検査・測定室等を置くことで、受診者の動線が放射状となるようにしています。この配置によって、検査順序を問わず空いている項目から実施してもらえるようになり、一筆書きの動線計画と比べて待ち時間が少なく、よりスムーズな検診が可能となりました。
 また、時間がかかりやすい項目であるエコーや診察などに用いる部屋数をあらかじめ増やしておくことで、受診者の多さに合わせて稼働する部屋数を変更することができ、待ち時間を少なくすることを実現しました。さらに、検査・診察時にはしっかりと医師やスタッフとのコミュニケーションが取れる時間を確保できるようにしています。
 他にも、受診者の気分が悪くなったときのための安静室を設置するなど、様々な事態に備えた配慮を行いました。

 検診フロアのスタッフエリアは、各種検査・測定室等のさらに外側としました。これによって、待合ラウンジからはスタッフが忙しく動く様子が感じられにくく、受診者の方に待ち時間を落ち着いて過ごしてもらえるようになります。そして、この配置は運営するスタッフ視点で見ても、各受診者の様子を一目で確認できるため、声掛けや心くばりを行き渡らせやすい環境となっています。


●受付・更衣室・結果説明室・レストラン(1F)
 ご利用される全ての方に対応できるよう、更衣室は3種類設けました。個室の更衣室には、ソファと手洗い器を設置しており、行きも帰りもゆっくりとご準備いただけます。ハンディキャップがある方用の更衣室へは、入口を別に設けることで、検診エリアへ向かうエレベーターまで最短の動線となるように配置しました。通常の更衣室においても、大きめサイズのロッカー、通路中央にはベンチを設けるなどしており、広々と着替えられる空間となっています。
 そして、女性専用施設という特徴から、更衣室の隣にはパウダールームを設置しました。席を多く設けつつ、一人ひとりのスペースを十分に確保し、時間を気にせず身支度ができる環境を整えています。鏡映りにまで気を配り、顔に影ができないような照明計画を行っています。
 また、検診エリアへは更衣室を経由しないと立ち入れない動線で、その更衣室の入口は専用カードによる認証を必須としており、セキュリティ面においても配慮をしています。

 1Fにはレストランを併設し、施設に新たな付加価値を与えています。検診後の楽しみの一つとしてお食事いただくのはもちろん、受診者でない一般の方の利用も可能となっていますので、検診後のご家族での待ち合わせや、日々のランチなどにもご利用いただける自由度の高いエリアです。健康にも気を遣った食事を提供しているレストランのため、食事改善のきっかけにも役立ちます。


●託児所・事務フロア(4F)
 子育て世代の女性にも安心して検査を受診していただけるように、施設の4Fには託児所を設けました。吹き抜け部分にはトップライトを設け、所内は明るく開放感のある空間となっており、お子様にものびのびと待ち時間を過ごしていただけます。

 事務室・医局・コールセンターは、業務で連携する場面が多いことから、近くに並べて設置し、廊下からガラス越しに室内の様子が伺えるようにしました。お互いを認識して声をかけやすい環境を整えることで、業務効率アップを図っています。
 
 スタッフ専用エリアにある休憩室は、1人での食事でも複数名でのコミュニケーションの場としても使いやすく、それぞれの業務の合間を充実させる、カフェのような雰囲気づくりを心掛けました。また、間仕切りは可動式のものを採用することで、空間をフレキシブルに変化させることが可能となり、小規模ミーティング等にも対応できる仕様となっています。


 本プロジェクトは、女性専用施設という特徴から、設計においても女性ならではの視点や配慮が求められました。さらに、医師をはじめ検査スタッフも女性のみで構成されているため、受診者と同様にスタッフ側でも、女性ならではの働き方や個々のライフスタイルについて考慮する必要がありました。
 そのため、弊社も女性設計者を主担当とするプロジェクト体制にて設計に臨み、施主であるクライアント様や工事業者様だけでなく、実際に運営されるスタッフの皆さまとも意見交換を重ねながら、内装や設備面までこだわり抜いた快適な空間づくりを行いました。開業後のヒアリング調査においても、受診者・スタッフにとって過ごしやすい施設であるという旨のご好評を多数いただいております。